この記事はこんな方にオススメ
本記事は、顧客満足度を向上させるための改善部分を探りたいと考えている方にオススメです。
また、アンケートはやってみたいけど、何をテーマにすればわからないといった場合にも、CESアンケートは取り組みやすい内容になっています。
概要
・CESとは
・NPS®との違い
・CESの上がる要因
・アンケート設計時に最低限盛り込みたい3つのポイント
・改善ポイントの見つけ方
CESとは
CES(Customer Effort Score ※1)とは、サービス利用時に顧客がどの程度努力(エフォート)を要したかをスコア化したもの、つまり、顧客努力指標を表します。ここで示す努力とは、顧客がサービスを利用する上でかかった労力や手間を意味します。
顧客が努力なしにサービスを利用できることが理想の状態とすると、サービス利用時に必要な努力が多くなるほど、スコアが高くなり、使いづらさやストレスを感じやすくなると言えます。
※1 2010年にハーバードビジネスレビューで発表された、顧客が「自身の抱える問題を解決するためにどの程度労力を要したか」を数値化する指標です。
また、顧客がサービスを利用する際に、「使いにくいな…」「手間がかかるな…」と感じている場合、満足度低下やサービスの解約につながりかねず、CESはリテンション率(顧客を維持できる割合)との相関性が高いといわれており、企業にとって重要な指標となります。
NPS®との違い
NPSとCESはよく比較されますが、NPS®(Net Promoter Score ※2)は顧客ロイヤリティや企業・ブランドに対しての信頼や愛着を測るために使われる指標のため、CESとは反対の内容をスコア化したものです。NPSは顧客体験全体を通しての推奨度を測る指標、CESは顧客体験の各フェーズにおける不満度を測る指標と捉えると良いでしょう。
※2 Net Promoter®およびNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
また、NPSとCESの違いは顧客体験の加点方式・減点方式と考えると更にイメージがしやすくなります。
加点とはそれ自体がなくても成り立つもので、期待値を超えたものを提供した時に発生します。例えば、店舗での気の利いた丁寧な接客など、それがなくてもサービス提供自体は支障がないが、その接客が期待を超えていて感動したという時などが挙げられます。この加点の要素が顧客満足度の向上に影響して、推奨度の向上に寄与していきます。そのため、NPSは推奨度だけでなく加点になった要素、つまり強みとしてアピールできる要素を可視化することに向いていると言えます。
一方、減点は無くてはならないものに不備がある時に発生します。例えば、飲食店でお皿やテーブルが汚いなどあるべき基準にみたない時などが挙げられます。減点が発生すると、不満の感情が生まれて、顧客満足度の低下につながり、その不満の原因を可視化するのがCESと言えます。
つまり、NPS的視点で素晴らしい接客をしたとしても、サービス自体が使いにくいなど、不満の感情を生んでしまう場合、顧客が満足する結果につながらないこともあります。
このようなケースを防ぐため、CES的視点で顧客体験におけるどの要素が顧客満足度を低下させているかを特定して改善につなげましょう。
CESの上がる要因
CESの上がる要因は様々ですが、大きく2パターンにわけることができます。
1つは顧客自身が何かアクションをする時(商品を買う・探す、手続きする時、など)にぶつかるパターンと、もう1つは企業の対応不足(接客時の態度が悪い、問い合わせ先が見つけにくい、など)により顧客の負担が増えるパターンです。
また、この2つのパターンはオンライン・オフラインそれぞれのシーンで発生するため、CESの上がる要因は下記の表のように4つに分類することができます。
アンケート設計時に最低限盛り込みたい3つのポイント
①CES
こちらはCESのスコア算出に必要な設問となります。
文言は任意ですが、顧客の感じたストレスや負担感を7段階程度の選択方式の設問で聞きます。
②スコア付けの理由
顧客がどのような場面でストレスや負担感を感じたかをFA(自由回答)の設問で聞きます。
ここで得られた回答をテキストマイニングで分析をすることで、今までに認識ができていなかった改善点を見つけることができるかもしれません。
③ 要素ごとの評価付け
各要素の評価を3段階程度の選択方式の設問です。
この設問の回答結果から、CESのスコアに対して、どの要素が影響しそうかを可視化することができます。
設問の目的が、不満に直結するポイントを探ることであるため、利用者にとってポジティブな要素(特典など)については設問に含めないようにしましょう。
また、何を聞くべきか迷った場合には、一般的なフレームワークなどの視点で整理してみると良いでしょう。
改善ポイントの見つけ方
CESアンケートを実施する目的は、自社のサービスの中で顧客の負担やストレスになる部分を把握し、改善することです。
最後の本セクションでは、実施後にどのような観点で結果を見て、改善するポイントを見つければよいかをご紹介します。
①CESと要素の掛け合わせ
CESと要素を掛け合わせた影響プロットを利用することで、どの要素がCESに影響しやすいかを把握することができます。
上図はQ1のCES算出スコアとQ4の各要素の評価スコア(不満度)を掛け合わせたものです。縦軸で上にいくほど不満度が高く、横軸で右にいくほどCESスコアに影響度を与えやすくなります。
この場合、優先的に取り組むべき重点改善が必要な要素は、右上の領域にある「着用画像のわかりやすさ」、「文字や画像のサイズ」、「表示速度」の要素となります。
次に優先度が高いのが左上の領域にある「画像の鮮明さ」の要素です。単体では小さなストレスですが、頻度や組み合わせによって大きなストレスとなる可能性があるため、注意しておくことが必要です。
また、左下の領域は、不満度は低く、CESスコアへの影響度も低いため、現状は気にする必要がない要素、右下の領域にある要素は不満度が低く、CESスコアへの影響度は高いため、現状維持するべき要素といえます。
②テキストマイニングで分析する
テキストマイニングで自由回答を分析します。
下図の例では、「サイズ感-わかる(否定)」の件数が1位で、「サイズ感がわかりづらい」と多く回答されていることがわかります。
しかし、この「サイズ感がわかりづらい」だけでは、サイズ感がわかりづらい理由まではわかりません。
そこで、アンケート回答の原文を見ることで、外国の方のモデルの写真を利用することが、自社顧客に対して、着用時のイメージを想像しにくくさせていたことに気づきました。
このようにして顧客を実感することで、着用モデルを自社のターゲット層に近いモデルに変更するという打ち手に繋げることができるのです。
このように、設問で聞いた影響しそうな要素の裏付けをすることや、把握できていなかった改善ポイントや、各要素の改善の方向性が見つかるかもしれません。
皆さまも顧客満足度向上、サービス改善のため、CESアンケートを始めてみるのはいかがでしょうか。
ライター:山根